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"世界の野球"インドネシア野球「“野球国力”ランキング査定システムがもたらす野球衰退」

2017年2月1日

文・写真=野中寿人

 前回のコラムにて、国際大会を開催できないことが、選手離れ(ひいては野球衰退)につながることについてご説明をさせて頂きましたが、やはり、この選手離れという問題は、極力避けなければなりません。
 野球途上国において、野球を紹介していき、子供達や少年達に興味を持ってもらうこと。また、青年達にも高度な技術を伝授し、向上心を持ってもらうこと。そして教育(人間形成)に入り込むこと。以上が野球人口の増加に繋げ、さらにチームや選手個人が上の目標に向かうからこそ、そこに、発展と向上が生じてきます。しかし、どうしても、組織主体の目線で物事を追ってしまった場合、主役となる野球を行う選手たちをメインとしての思考性やモチベーションにギャップを生ませてしまい、結果として、マイナスへ向かう事もあります。

 このマイナスの状況を招いている要因が、世界/アジアランキングを査定するポイントシステムであり、この項では、この問題に触れてみたいと思います。
 現状の査定システムでは、国際大会へ継続して参加をすることによってアジア/世界ランキング上昇の査定ポイントの獲得が有利になります。このいわゆる「野球国力」を査定するシステムは、国としての野球の発展と向上を図る話の上では理解できますが、国代表チームの運営を正常に賄えない野球途上国には適合しない査定のシステムなのです。

 国際大会に継続して参加出来るかどうかは、その時の資金獲得の動きに委ねるしかない現状、国際大会での勝負の成績が、直接、世界/アジアランキングに反映されない、国代表チームを統括する上での“運営力”の反映を含む、査定ポイントの獲得のシステムも、野球途上国の選手にとっては、モチベーションを低下させているのが実情なのです。

 以前にも記しましたが、昨年の東アジアカップの例を挙げてご説明を致しますと、東アジアカップで優勝をしたフィリピンが良い例で、実力的には香港やタイより上にもかかわらず、国や連盟による、代表トップチームの運営能力の問題から世界/アジアランキングは、香港やタイより下回っている状態なのです。
 因みに、この東アジアカップでの各国の成績は、優勝がフィリピン、準優勝がインドネシア、3位がスリランカ、4位が香港、そして、5位がタイになります。加えて、インドネシアについても、準優勝をしていますが、2010年と2012年のアジアカップに関して資金不足のために辞退したことがアジア/世界ランキングの査定ポイントに大きく影響し、結果として、香港、タイ、スリランカより下位にランキングをされています。

 これは、正直な話、国際大会で勝っても、そのさらに上位の国際大会には、アジア/世界ランキングの順位上、出場が出来ないことを意味しています。この様な査定のシステムでは、国際大会に参加する以前に、選手たちがモチベーションを失ってしまいます。野球を行う選手が減っていくことは、立派な野球衰退です。
 野球は勝負する競技で、必ず勝ち負けを表すもの。従って、勝敗で白黒を査定すれば良いのです。勝ったチームが上の国際大会へ出場するのが当たり前であり、運営力が勝っていても、実際に実力が劣っている国が上の国際大会に出場することには大きな疑問を抱きます。

 皆様、よく考えてみて下さい。野球途上国では、国際大会への参加も、資金調達の部分から非常に大変なことであり、仮に、今年は国際大会への参加が出来たけれど、来年は定かではないという状況の中にいるのです。ましてホスト国として国際大会を開催せることは、更なる経費がかさみ大変なことです。 
 資金の調達に苦労して国際大会に参加する以上、その時の1発勝負に全てをかけています。そこに、勝ち負け以外の査定が入るシステムでは、選手の野球離れに連動してしまいます。
「甲子園大会の地区予選大会に優勝、しかし、学校運営の経済的問題から、数年間、地区予選大会に出場していなかったり、初出場とのことで甲子園出場が剥奪」
これは飛躍した話ですが、組織とか形態は別として、選手たちの落胆の心情は同じです。

 では、何回、継続して国際大会に参加をすれば、国際大会で勝った(国際大会での順位)相手よりアジア/世界ランキングが上がるのでしょうか?また、これは、継続して国際大会が開催されることが条件での話ですが、現状、アジア/世界ランキングを上昇させる為の、東アジアカップという国際大会が開催されないという状況もいかなるものでしょうか?(前項参照)
 野球途上国の選手たちは、人生の選択肢に乗らない状況下で、野球を愛し、野球を行なっていることを、節に考えて頂きたい。野球の発展上、野球国力という内容は分かりますが、野球先進国の日本人としての眼と、野球途上国の中に同化している眼と、2つの眼を持つ、アジア野球途上国で指導をしている我々から判断すれば、野球途上国を、その査定の土俵に上げるための施策を野球先進国が行わなければ、野球国力の話は成り立たないのです。

 パキスタン、香港、タイ、フィリピン、インドネシア、スリランカ、シンガポール、イラン、ネパール、カンボジア、ベトナム、マレーシア、インド、その他のアジア野球途上国は国代表チームを編成して活動をしています。そして、各国は、真剣にアジア選手権大会やアジア大会への参加を目標として活動をしています。
 仮に、これらの国では、現状、野球がマイナーな競技と認知されているから、国際大会の開催や、国際大会への参加の資金調達が出来ないことは仕方の無いことだと、簡単かつ、他人的な言葉で終わらせてしまったならば、世界レベルでの野球という競技の発展は絶対にありません。
 すなわち、野球衰退を防ぐ最大のポイントとなることは、今後、アジア/世界ランキング1位の日本をはじめ、ランキング上位国が、どの様な?どれだけ?野球途上国へ支援をするのかが、世界レベルでの野球の発展に直結するということです。そして、同時に、この成果が、次の段階として、オリンピックへの正式種目入りを成すものなのです。

 日本が行わなければならないことを、プロ野球、独立リーグ、社会人野球、大学野球、高校野球、シニアやリトル、ポニーリーグに至る、日本の全野球関係者の方々に真剣に考えて頂きたい。方法は多種多様にあるはずですし、早急な実行が必要です。今、この世代に生き、野球に携わる野球関係者や野球をファンの方々は、次の世代に、野球を、どの様な形で残し、発展と継承性を持たせて行くのか?これが、現世代の我々に課せられた事ではないでしょうか?
 野球の発展に向けて、皆様方からの知恵と、力添えを、お願い申し上げます!

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
野中 寿人(のなか かずと)
1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。

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