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"世界の野球"「泥水を飲み続けて修正へ導く」

2015年12月2日

文・写真=野中寿人

 文化や風習の相違は、物事の捉え方に大きな相違を与えるものです。野球後進諸国へ野球を伝授するに際して、良いと思われるやり方が最初から適応出来るとは限りません。私は日本人ですので日本で野球を習いました。野球に纏わるハード面、ソフト面の全ては日本流になります。日本の野球が1番であるとは言いませんが、インドネシアと日本を比べた場合、どうしても野球先進国の日本に軍配が上がってしまいます。
 しかし、文化や風習からくる物事の捉え方の相違が、良いと判断が出来る事柄でも、最初から施工が難しい場合が出てきます。従って、最初は、今までインドネシア流として行われて来たことに同調をして事を進めて行かなければなりません。言うなれば「泥水を飲む」ということです。そして、この「泥水」は1杯で終わる場合もあれば、何杯も飲み続けなければならない場合もあり、この納得が出来ない状況を、自己の中に取り込む上で、どこまでの我慢を限度とし、自己への納得を許すことが出来るのかという、葛藤に悩むのです。

 2004年からインドネシアで野球普及活動を開始し、開始後の数年間は、周囲に多くの日本人の同志が居ました。しかしながら、この「泥水」と「納得」とのアンバランスに我慢が出来ずに、次々と野球普及活動を辞退をして行きました。私は自己の人生の修復ということをインドネシアでの野球普及の底辺に据えているため、アンバランスも呑み込む事が出来ますが、通常では困難な事だと判断を致します。
 最初は「泥水」を飲み、成果に向けた、良いと判断される方法論をディスカッションして試してもらう。泥水を「飲み続ける」としても、何度も志向性を変えてディスカッションを繰り返して試してもらう。そして最終的な修正へと導いて行く。これが2004年から今日まで私が行っている修正方法になります。
 また、その経過において、大きな成果が得られたならば、その修正した形は、1つの成功例としてインドネシア現地野球社会に認知され、新たに出現する修正事項に際しても、今まで飲んだ「泥水」とは異なり、その濃度も薄くなり、より安易に修正へと導く事が出来ます。

 まず一端は全てを受け入れる事。最初の受け入れる段階で「駄目・無理」だと判断をして跳ねかさない事。仮に、時間はかかったとしても、修正に気づいてもらい、納得をしてもらい、修正の方法を試してもらう様ように、導く事が重要であると判断します。
 これは指導の部分とは異なった1つの例ですが、インドネシアはイスラム国家である為、毎日、イスラム教の礼拝の時間が定められています。また、毎週金曜日の昼の12時前後の時間帯についてもイスラム教の礼拝の時間となります。このイスラム教の礼拝時間は、どんな理由にせよ動きを止まらせなくてはなりません。強化練習のプログラムにしても同様にストップがかかります。インドネシア代表チームは仕事をしている選手たちのことを考慮し、仕事が終わった後での、夜の時間帯にナイターにて練習を行うことも通常としていますが、夕方6時前からの練習の開始がままならず、夕方6時のイスラム教の礼拝時間が終わるのを待ってから練習を開始せざるを得ないのが実例です。特に、金曜日については、なるべく午前中の練習は入れない様に工夫をし、午後2時以降からの練習開始の体制を施いたり、または、終日全休に当て込めるようにして対応をしています。

 現状では下記の様なことはありませんが、2007年に、上野投手を擁する日本代表女子ソフトボールナショナルチームが参戦をした、女子ソフトボールのアジアカップ大会がジャカルタで開催された時のエピソードとして、終盤、僅差の逆転を狙う某国代表チームが、無死満塁の攻撃の場面を迎えた時、イスラム教の礼拝時間となり、40分以上もの間、試合が中断となったことがありました。イスラム国家でない某国代表の監督が大会本部へ、この中断に対して大抗議をしました。しかし、大会本部からの、イスラム国家への敬意という理由により却下され、結局、試合の結果は、この中断によって試合の流れが変わってしまい得点を入れることが出来ずに敗戦してしまったのです。中断していなかった場合、得点が出来たか?出来なかったか?は定かではありませんが、チームの勢いによる可能性は失ったことは事実といえます。この件により、以後、試合中のイスラム教の礼拝による中断は無くなりましたが、金曜日については、現在でも、午前中から午後2時までの試合は、国内大会、国際大会、共々に、試合のスケジュールは、入れ込まれていないのが実情になります。

 野球を行う上の基本的な良いと判断される「根の部分」は理解し実行してもらわなくてはいけませんが、その先の「枝葉の部分」については、その国独特のもので良いのです。これは次項でご説明する「動作の問題」でも触れてみたいと思います。

日本人監督の挑戦
著者プロフィール
野中 寿人(のなか かずと)
1961年6月6日生。日大三高野球部在学3年の夏に西東京代表にて全国高等学校野球選手権大会に出場。
その後、日本大学体育会硬式野球部へ進学。日本大学では1年の秋から体調を壊し2年間の休部をし、現役野球人生を終える。大学卒業後は、フィリピン、サイパンなどで仕事をし2001年にインドネシアのバリ島へ移住。2004年からバリ島の子供達に野球を教え始め2005年にリトルリーグを発足。2006年にはバリ州代表監督に就任、また、クラブチームを発足。2007年にはインドネシア代表ナショナルチームの監督に就任。2007年のSEAゲームスで銅メダル、2009年のアジアカップで優勝、同年のアジア選手権大会へ出場。その後、インドネシア代表ナショナルチームの監督を辞任し、地方州底上げの為に、東ジャワ州代表監督に就任。2011年のインドネシア国体予選で準優勝、2012年のインドネシア国体前哨戦で優勝、同年のインドネシア国体決勝大会で銅メダル。そして2014年からインドネシア代表ナショナルチームの監督に復帰をし、2015年の東アジアカップで準優勝。

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