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"世界の野球" 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信 第2回「フィジー野球の今、そして、未来へ」

2020年12月7日

文・写真=西尾高広

 Bula(日本語で「こんにちは」という意味)!!
 私のJICA海外協力隊員生活は、フィジーに戻ることなく、故郷の福井県で終わりを告げることになりました。フィジーでの活動開始約3か月後に発生した麻疹の流行に伴うスポーツ活動の自粛、新型コロナウイルスの世界的拡大に伴う一時帰国と、まさに「怒涛」の一言に尽きる海外協力隊員生活でした。

 フィジーでの生活を振り返れば、赴任当初、英語でのコミュニケーションができない中で必死に気持ちを伝えようとしてくれた同僚と笑い合ったことや、どうすれば馴染めるかを考え、現地のカバという謎の飲み物を訳もわからずにガブ飲みした日々等が思い出されます。私が彼らにとって有益な存在だったのか、日本に帰ってきてから自問自答の日々を送っています。たくさん衝突し、日本が恋しくなる時もあり、なぜここにいるのだろうと考えた時もありました。自分の目で見たもの、肌で感じたもの、全てを今後の生活に、そして社会に還元していきたと思います。10月19日より、福井市内で新生活を始め、小学校に勤務しています。地元福井の、いや日本の未来を背負うこれからの子供達の教育に僕の経験を少しでも役に立てることができればと考えています。

 11月14日に、「福井県海外協力隊員等を支援する会」の協力を得てフィジーに寄贈した野球用具等の引き渡し式をオンライン形式で行いました。フィジーの関係者とは約8か月ぶりの再会となりましたが、画面越しに見える当時と変わらない子供達の笑顔に、懐かしさと安堵感を覚えました。引き渡し式と併せて、私の送別会ということで、高校生以下選手代表、及び、中学生以下選手代表から謝辞の言葉をもらいました。具体的な何かをはっきりと残すことはできなかったかもしれませんが、フィジーで彼等と過ごした足跡が、お互いの胸の中に確かに残っていることを実感しました。

 フィジー野球の発展のためには、まだまだ多くの課題が残されています。海外協力隊員として計画していた指導者講習会(NPBから教本を寄贈頂きました)の開催や投手希望者への技術・体力強化に向けた指導はもちろん、専用練習場の確保やクラブチームを設立しての試合機会の提供など、少し考えただけでも枚挙にいとまがありません。草の根レベルで選手層を拡大しつつ、各世代の代表チームを強化していくには長い時間がかかります。サッカーの普及が進みつつあるものの、まだまだラグビー一強に近い状況にあるフィジーのスポーツ界において、野球というマイナースポーツを普及・強化していくことは簡単ではありません。それでも、画面越しに再会した子供達のように「野球が楽しい・野球に興味がある」というフィジー人が一人でも存在する以上、彼等の思いに応えるべく、協会には地道な活動を続けて欲しいと思います。

 フィジー野球では今、2022年6月にサイパンで開催予定の地域大会への代表チームの派遣を検討しています。太平洋諸島諸国では、野球の国際大会の機会が極めて限られていますが、2022年の先には、2025年にパラオで同様の大会開催が予定されており、更には、フィジーが2027年大会のホストを検討している太平洋スポーツ大会(Pacific Games:4年に一度開催される主に南太平洋諸国が参加する総合競技大会)で野球が参加競技に含まれることが期待されているため、協会では、フィジー大会での金メダル獲得を目指す7年計画を設立しました。現在の高校生世代の選手の中には、世界少年野球大会(世界少年野球推進財団など主催)に参加した選手がいますし、中学生世代の選手には、ワイルドカード枠での出場でしたが、昨年台湾で開催されたU-12ワールドカップ本大会(世界野球ソフトボール連盟主催)経験者もいます。アメリカとの関係が深く野球が比較的発展しているグアムやサイパンなどが強豪として君臨していますが、これから約7年かけて彼等を鍛え上げることができれば、域内大会での優勝も不可能ではないはずです。まずは、2027年大会での優勝を目指して、協会及び中高生世代の選手には、本気で野球に取り組んでもらいたいと思います。コロナ禍で延期となっていますが、日本をはじめその他野球先進国への海外武者修行も行われるようですので、その成果も期待しています。

 まだまだ課題だらけのフィジー野球ではありますが、それだけに伸び代しかないと言えるのかもしれません。選手達の笑顔に無限の可能性を信じています。一人でも多くのフィジー人が野球に夢や希望を見出して欲しいですし、私も、将来的に、彼等と共にフィジーに新しい価値を創造することができればと考えています。

 拙い文章ではありますが最後までお付き合い頂き誠に有難うございました。残念ではありますが、私のフィジー野球に関する報告はこれで終わりとなります。今後は、協会幹部による現地からの報告を楽しみにしつつ、今の私にできることを模索していきたいと思います。

 フィジーの、そして世界中の野球小僧達に幸せあれ。

南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
著者プロフィール

西尾高広
1994年9月28日生
福井県出身
福井県立福井商業高等学校卒業後→日本体育大学へ進学。大学在学中は女子野球部の指導者として活動。
2018年10月から青年海外協力隊野球隊員としてスリランカへ派遣。2019年 8月25日よりフィジー野球・ソフトボール協会へ配属。主な活動は地域巡回指導、ナショナルチームの編成、強化
好きな言葉は日々是好日。

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