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侍ジャパン強化試合 対戦国紹介~オランダ野球の歴史~

2016年11月7日

文・写真=松﨑晃平

 オランダ野球と聞いて、ピンとくる人は少ないであろう。オランダといえば、サッカーだ。日本の野球ファンでさえ、オランダに野球が存在することすら知らない方が多い。そんな国が侍ジャパンの強化試合の相手に決まった。今回はそんな未知の野球界を紹介したい。

 近年、NPBでも少しずつオランダ人選手が増えてきた。福岡ソフトバンクのバンデンハーク、東京ヤクルトのバレンティン、更には東北楽天に在籍したA,ジョーンズやファンミル等が挙げられる。少しずつ、日本でもオランダ人野球選手の存在に対する認知が広がってきている。アメリカMLBに目を向ければ、更に増える。ゴールデングラブ常連のシモンズ(エンジェルス)、ジーターの後継者グレゴリウス、2015年シルバースラッガー賞のボガーツ(ボストン)などは全員オランダ国籍だ。
 国際大会での活躍も目立つ。2011年国際野球連盟(IBAF)による最後のワールドカップでグリエル、デスパイネ擁するキューバを下し、初優勝。WBCでも2009年はメジャー軍団ドミニカ共和国を2度下し2次ラウンド進出。2013年大会では強豪韓国、キューバを下し準決勝進出。ベスト4に輝いた。また、2年に1度開催される欧州野球選手権では34大会中22回の優勝を果たしている。日の目を浴びないながらも地道に代表チームは好成績を収め続けている。

 なぜ、オランダ代表が国際大会で活躍できるのだろうか。その答えは代表チームの構成にある。そもそも、「オランダ王国」には構成国がある。ヨーロッパ本土の「オランダ」と、カリブ海に浮かぶ「キュラソー」「アルバ」「シントマールテン」の3か国で「オランダ王国」が構成されているのだ。したがって、野球代表チームも各地の出身者で構成される。バレンティンやジョーンズを含むMLB で活躍する選手たちはキュラソー、アルバの選手。彼らの多くが身体能力の高い野手だ。一方、オランダ本土の代表選手たちは、バンデンハークを筆頭に長身の投手たちが多い。近年のオランダ代表はキュラソー、アルバの選手たちがとった得点を、オランダ本土の投手陣がテンポよく投げ込みリードを守っていくというチームスタイルで台頭してきた。
 その反面、野手の大半がキュラソー、アルバ出身のため、キュラソー代表などと揶揄されることもある。では、オランダ本土の選手はどのような環境でプレーしているのだろうか。オランダ本土の野球の歴史や特徴を紹介していきたい。

 意外にもオランダ語には独自に野球を意味する言葉がある。それが「ホンクボル(Honkbal)」だ。国内リーグはトップリーグを意味する「ホーフトクラッセ」と称され、英語ではダッチ(オランダの)メジャーリーグと訳される。王立オランダ野球ソフトボール連盟(KNBSB)の創立は1922年。日本プロ野球の前身である「日本職業野球連盟」のリーグが1936年に開始されたのを鑑みると、その歴史の長さをお分かりいただけるだろう。
 参加球団は8チーム。レギュラーシーズンは1週間に木・土・日の3試合。全42試合で、その後上位4チームがプレーオフ、下位4チームがプレーダウンを戦う。プレーオフの上位2チームは優勝を決めるための「オランダシリーズ(Holland Series)」に進み、オランダナンバーワンが決まるという流れだ。加えて、プレーダウン最下位のチームは、2部リーグ(オーフェルハンフスクラッセ)の優勝チームと入れ替え戦を行う。

 リーグの集客人数は平均100~500人と少ない。しかし「オランダシリーズ」では1500~2000人を越え、国営テレビ局での中継も放送されることから、ある程度の注目度はあるようだ。また、紙媒体ではオランダの最大手紙「de Volkskrant」で月曜日に1週間の試合結果が載り、国際大会の際には頻繁に特集される。野球ファン向けの野球専門誌「Fastball」も存在する。
 選手たちは野球だけで生活している選手と、本業を持ちながらプレーする選手、学生の選手と分かれる。野球だけで生活しているのは代表レベルの選手。代表に選ばれるとオランダオリンピック委員会(NOC*NSF)から報酬が出ることになっており、その報酬とクラブからの給与で生活を賄っていくことができる。その他多数は本業を持つ選手たち。野球に関わるジムの経営者や野球用品の販売業を商いにする選手も存在すれば、全く関係のないエンジニアや一般の会社員まで様々。ワークライフバランスの先進国であり、スポーツが生活の一部として市民に浸透しているオランダ社会であるからこそなせる業である。また、若い選手たちは大学で学びながらオランダリーグでプレー。アメリカの大学に通いながら、大学のシーズンオフに国内に戻ってきて参加している選手もいる。
 リーグのレベルはMLBのシングルAからルーキーリーグの間ほどと評される。ただ、アメリカマイナーから帰ってきた選手も多く、国内のみでプレーしてきた選手でも代表として毎年のように世界の舞台を経験しているので一概にレベルが低いと決めつけることはできない。毎年開催されているヨーロッパのクラブ対抗戦「ヨーロピアンチャンピオンズカップ」では、イタリアのクラブと肩を並べ、過去2大会はオランダのクラブが優勝している。

 また、オランダは毎年自前で国際大会を開催している。「ハーレムベースボールウィーク」と「ワールドポートトーナメント」をそれぞれ隔年で開いており、毎試合2000~3000人が詰めかける。大会にあわせて様々なイベントを企画し、観客は上半身裸でビール片手に声援を送る。この大会を見るとオランダに野球が文化として目づいていることが窺い知れる。この2つの自国開催大会には毎年、国内リーグの選手だけで代表を構成し、大会に臨んでいる。招待国はキューバ、アメリカ、台湾、プエルトリコ、そして日本など様々な国が参加するレベルの高い大会だ。
 近年、日本代表は大学のトップ選手を送り込んできている。2年前は横浜DeNAの山崎康晃投手や、東北楽天の茂木栄五郎、福岡ソフトバンクの田中正義らそうそうたるメンバーが出場した。今年は東京六大学の代表が、中日に入団する柳裕也投手らを擁し来蘭。その日本代表を下し、今年の大会を制したのはオランダだった。決勝では柳から2点を奪って勝利。この戦いぶりを見ても国内リーグの選手だけでも高いレベルで戦えることが分かる。今年はオランダリーグの選手が初めてMLBでドラフト指名された。キュラソー等のメジャーリーガーだけではなく、国内リーグの底上げがオランダ代表の成長を支えている。

 以上、オランダの野球を紹介してきた。オランダの国の持つ特色や野球の置かれる環境から独特な野球文化が存在することがお分かりいただけたのではないだろうか。日本の野球ファンの多くは、メジャーリーガーがいない相手国に対して、レベルの低い相手だ、と興ざめる方が少なくない。ただ、今回紹介してきたように相手国の背景を少しばかり調べてみると意外と興味深い。侍ジャパンの勝敗や、ひいきの選手のプレーだけでなく、相手国のプレーを楽しむのも国際試合の醍醐味ではないだろうか。
 今回来日するオランダ代表は国内の選手プラスマイナーの選手。キュラソー出身のメジャーリーガーであるプロファーが来日する。世界レベルのプレーはもちろん、未知のオランダリーガーたちのプレーに注目してほしい。

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