9月18日、「第31回 BFA アジア選手権」(中国・平潭で9月22日から28日)に出場する侍ジャパン社会人代表の直前合宿2日目が東京都の東京ガス大森グラウンドで行われた。
午前中の全体練習を終え、午後13時からは東京ガスとの練習試合に臨んだ。試合は社会人代表が初回に網谷圭将(ヤマハ)のレフトへの2ラン本塁打で先制すると、5回には水谷祥平(JR東海)に逆方向への満塁本塁打が飛び出すなど初招集の選手が躍動。10対3で勝利した。





先攻の社会人代表は初回、東京ガス先発の髙橋佑樹に対して2番・添田真海(日本通運) がセンターへ弾き返し出塁すると、3番・網谷がレフトフェンスを越え、防球ネットに突き刺さる2ラン本塁打を放ち先制に成功。
先発を託された増居翔太(トヨタ自動車) は都市対抗後初の実戦登板と久々の登板。初回は打たせて取り無失点も、2回に先頭打者にレフトへの本塁打を打たれ1点を失う。さらに1死からはセンターへのソロ本塁打を浴び2対2の同点に追いつかれた。この日の投球に増居は「初回は結果的に0点に抑えましたが、フォームのバランスが悪く、汚い真っすぐで散らかっていたことが逆に良かった感じでした。2回は体重移動のバランスを気にしながら投げて出力が下がったところを痛打されました」と冷静に振り返った。
それでも3回から登板した近藤壱来(JR四国) が上位打線を三者凡退に斬り攻撃のリズムをつくると、直後の4回表に打線がつながった。1死から5番・古川智也(三菱自動車岡崎) が詰まりながらも振り切ったことが功を奏し、センター前に落ちるポテン安打で出塁すると、続く松山翔太(西部ガス)の火の吹くような打球が三塁線を破るツーベースとなり二、三塁の絶好機。チーム最年長31歳の矢野幸耶(三菱重工East)に回ると「相手の得意球のカーブを狙っていた」との言葉の通り、浮いてきたカーブをセンターへ運ぶ犠牲フライを放って3対2と勝ち越し。
さらに2死一、二塁から、9番・辻本勇樹(NTT西日本) が「浮いたボールを狙っていた」と右中間への2点タイムリーツーベースでつなぎ5点目。打順は1番に還り、熊田任洋(トヨタ自動車) も流れに乗り、左翼線に落ちる技ありのタイムリーを放ちこの回打者9人で4点を奪った。
続く5回には代わった投手の低めのボール球をきっちり見逃し2つの四球も絡めて1死満塁の絶好機を迎える。8番・水谷に逆方向のライトフェンスを越える満塁本塁打が飛び出し10対2と一気に突き放した。
投手陣は2番手の近藤が3イニング目となった5回に内野ゴロの間に1点を失ったものの、3回を1安打に封じる好投をみせ好調をアピール。キレのある直球に加え、小さく曲がるカットボールを有効に使う投球に、捕手の辻本も手応えを得た。6回からは3番手の左腕・不後祐将(JR東海)が先頭打者を出しながらも、真っすぐの球威もあり反撃を許さず。7回には一塁手・古川智也(三菱自動車岡崎)が一二塁間への打球を横っ飛びで好捕し併殺打に仕留める好守も光り、不後は3回を投げ2奪三振、無失点に笑顔をみせた。







最終9回は渕上佳輝(トヨタ自動車)が登板し、いきなり先頭打者に安打を許したが、空振り三振、併殺打と冷静に後続を断ち試合を締めくくった。
また試合後には無死一、二塁で始まるタイブレークの練習も行われた。川口監督は「都市対抗を見ていても無死一、二塁のバントが1番難しい。プレッシャーもかかりますし3人のバッターでまずは1点を取る攻撃の方が良いと思っています」と説明し、先攻の社会人代表の先頭打者・佐藤勇基(トヨタ自動車)はヒッティングの構え。結果的に空振り三振となったが、次打者の和田佳大(トヨタ自動車)が安打でつなぎ福井章吾(トヨタ自動車)の犠飛で1点を奪った。その裏は渕上が犠打で1死二、三塁とされたが、浅いライトフライ、空振り三振と相手打線を封じ込め無失点でしのいだ。
打線全体を通して相手投手の低めの変化球に手を出さず空振り三振はわずかに2つ。これには試合後に川口監督も「見逃し三振OKという話をしていて、打者心理としてはしたくないだろうけど、そこを割り切ってできるっていうのはさすがだなと思いました」と評価した。加えて代表選手は2ポジション以上を守れるのが条件との方針のもと、遊撃手としてスタメン出場の添田は、不測の事態に備えて試合途中から大学3年時以来7年ぶりの外野守備につくなどユーティリティ性も発揮した。
直前合宿最終日となる3日目は同じく東京都の東京ガス大森グラウンドで練習を行い、12時から(予定)は鷺宮製作所との大会前最後の実戦を迎える。川口監督はメンバーを代えると明言したが「やり方は変えるつもりはないので、自分たちの力をどう発揮できるかを見ていきたい」と期待を込めた。
監督・選手コメント
川口朋保監督
「(初の実戦を終えて)初めて代表に選ばれた選手も緊張感を持ちながらやっていたので、良かったと思います。先発の増居翔太(トヨタ自動車)は結果的に点を取られましたけど、全然心配もしていないですし、オープニングラウンドに合わせてくれるんじゃないかなと思っています。今日投げた4人はしっかりと自分の投球をしてくれました。特に不後祐将は都市対抗で登板機会が無かったので心配していましたが、思った以上に良かったのですごく期待しています。(打順ついては)OPS(出塁率+長打率)という数字を気にしながら1週間前に決めました。OPSが高い選手に何回も打順を回した方がチャンスはいっぱい来ると考えています。(気になった点は)初回に安打を打たれた後の外野手の返球が悪かったのと、タイブレークでの走塁で打球判断があまり良くなかったことです」
網谷圭将(ヤマハ)
「気負いもせず、自チームとは違うユニホームということで新鮮さを感じながらフレッシュな気持ちで試合に入ることができました。(第1打席で先制の2点本塁打)打った球は内角よりのカットボールで、打った感触は完璧でした。今日の東京ガスの髙橋佑樹投手とは同級生で一緒にアジアウィンターリーグでも同じチームでやっていて、結構知っていた投手なのでいつもの感覚でとにかく食らいついていこうという感じでした。全部の打席で積極的に振りにいくことができたので継続していきたいです。(初の代表選出について)すごくうれしい気持ちでいっぱいです。個人的な実力を評価されてここに呼ばれていると思うので、本当にモチベーションが高いです」
水谷祥平(JR東海)
「ユニホームがすごくかっこよかったので打てる気がしました。選出された時は驚きしかなかったです。選考合宿から外野手争いが結構激しくて、他の選手がよく打っていたのでどういう判断をされるかは分からなかった中で選んでもらったからには自分の成長もそうですし、やるからには1位になりたいと思ってやっています。(第1打席では粘りを見せた)相手がしたいことに対してはまらないようと考えた時に逆方向を狙う選択をしました。見逃し三振はしましたが、自分の中ではすごいいい打席で、ホームランの打席に確実につながりました。ホームランは甘めの直球で、少し刺された感じもありましたが押し込む感覚もあり、風にも乗って入ってくれました。(チームの雰囲気は)みんないい人すぎて死ぬほど楽しいです。川口監督が関係性を良くしようという風に言ってくれているのもあって、積極的にコミュニケーションを取れていると思います」
不後祐将(JR東海)
「3イニングを投げて2回先頭を出してしまったんですけど、落ち着いて目の前のバッターを打ち取るってことだけを意識して投げました。実戦は1週間前にオープン戦で投げて以来でした。今日は真っすぐの高さが良かったのと、3イニング目はカーブでバッターのタイミングをずらすことができました。(中学3年のU-15W杯以来9年ぶりに侍ジャパンに選出)もう1度このユニフォームを着られるとは思っていませんでした。こうして社会人の日本代表に選出していただいたので、自分の持っている力を十分に発揮したいなと思います」