6月22日、「第4回 BFA 女子野球アジアカップ」(10月26日から11月1日まで中国・杭州)に向けた侍ジャパン女子代表の候補選手強化合宿の3日目が広島県三次市の電光石火きんさいスタジアム三次で行われた。







前日に引き続き、7イニング制の紅白戦を実施。中島梨紗監督は試合前に「今日は全部を出し切って、アピールしまくってください。元気よくいきましょう」と選手へ声をかけた。
紅白戦の先発のマウンドに上がった佐藤美咲(IPU環太平洋大)は堂々の投球で2イニングを無失点に抑えた。110キロ代後半の低く鋭いストレートを武器に、走者を出しても表情を変えず落ち着いた投球を続けた。IPU環太平洋大では主に走者がいる場面でイニング途中から登板する火消し役を担っており、マウンド度胸の良さもうかがえる。
坂本紗桜(桃山学院大)も力のあるストレートで打者を詰まらせ、2回無失点の好投。最後の打者は見逃し三振に仕留めて笑顔を見せた。5月に行われた第11回全日本大学女子硬式野球選手権高知大会では、決勝トーナメント進出に向けて1点も与えられない状況で登板し、4回無失点とプレッシャーに打ち克つ力が際立っていた。先発・救援ともに経験が豊富なこともあり、代表に選出されればさまざまな場面で重宝されそうだ。
大量失点となった前日の登板の反省を活かし、うまく気持ちを切り替えたのは石原咲羽(秀明大)だ。緩い変化球でカウントを整え、なかなか前に飛ばないストレートで強力な打撃陣を打ち取る。安定したフィールディングも披露し、結果は2回1奪三振無失点。2イニング目を終えた後には、力が抜けてホッとした表情が見られた。中島監督は石原の投球について「昨日の失点から仕切り直して、いつも通りの準備をして投げてくれました」と充実の表情で振り返った。







打撃では三塁手の日野美羽(日本大国際関係学部)が躍動した。第1打席で初球をライト線に運ぶ二塁打を記録し、第3打席にも強烈な打球をライト方向へ放って三塁打。他にも鈴木はな(東海大)と金田涼々(平成国際大)が第1打席の初球からヒットで出塁し、アグレッシブさをアピールした。
4番・一塁手としてフル出場した木村睦実(大阪体育大)は先制適時打を含む2安打。昨年の女子野球オールスターゲームズイン東近江でも劇的なサヨナラ打を放つなど勝負強さが光る打者で、前日のフリー打撃でも圧倒的な飛距離でパワーを見せつけていた。また、2日間で4つの四球を選ぶ選球眼も魅力的だ。
前日の紅白戦でマルチヒットの活躍を見せた小川舞(新潟医療福祉大)、花本穂乃佳(日本大国際関係学部)、山田恵(福井工業大)もそれぞれ安打を放ち、高いポテンシャルを遺憾無く発揮。いずれの選手も塁に出るとすかさず盗塁を狙う積極性を持ち合わせており、内外野ともに熾烈な代表入り争いが繰り広げられた3日間だった。
活気にあふれた合宿を打ち上げ、中島監督は「みんなはチームの主軸だと思うけど、外の世界を見るともっともっとレベルが高い選手がたくさんいることを忘れないでほしい。合宿を通じて、1人1つ以上は必ず学んだことがあると思うので、それをチームに持ち帰って、夏の選手権に向けて頑張ってほしいです」と選手を激励する一方で「キャッチボールやシートノックの送球が悪すぎるので見直してほしい。グローブを構えたところに必ず強いボールを返せるようにしよう」と女子大学野球トップクラスの選手たちが集まっているだけに、あえて厳しい言葉も送った。
代表への選出・不選出にかかわらず、今回の合宿で学びの多い経験を積んだ選手たちは今後も女子大学野球のさらなる発展に向けて力を発揮してくれるに違いない。
全日本大学女子硬式野球連盟に所属する選手で編成される代表チームのメンバー20名は後日発表し、若手選手の強化、国際大会の経験・教育を目的としながら、4大会連続4回目のアジアカップ制覇を目指す。
監督・選手コメント
中島梨紗監督
「昨日よりもコミュニケーションが取れていて、1球で決めるぞという思いが伝わってきました。チームを引っ張る4年生の姿も印象的でしたね。今回参加した選手たちはこれからの女子野球界を引っ張っていく存在になるので、最後は課題も含めて話をしましたが、これを機に意識が変わってくれると嬉しいなと思います。いい選手がたくさんいるので、ミーティングを重ねながら選考を進めます」
上館美乃(仙台大)
「このような合宿の機会をいただけて光栄です。小さい頃から侍ジャパンに憧れていました。2日間の紅白戦を通じて、女子野球のレベルの高さをあらためて実感しましたし、自分に足りない部分にも気づくことができました。チームの勝利に貢献できる投手、そして捕手になりたいです」
石原咲羽(秀明大)
「昨日は自分が思うようなピッチングができなかったので、今日は絶対にやってやろうという気持ちでした。コントロール良く、ストレートと変化球も上手く投げ分けられたと思います。今回合宿へ参加するチャンスをいただけたことで、侍ジャパンへの憧れが大きくなりました。尊敬する今永昇太選手(シカゴ・カブス)のような先発ピッチャーになりたいです」