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"世界の野球"【第19回】清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記 「WBC予選大会 現地レポート Vol.3」

2016年3月18日

文・写真=元 野球日本代表 清水直行

 大会前の練習試合と練習を終え、いざ初戦の南アフリカ代表戦へ。デーゲーム。天候は快晴、気温は35℃ぐらいあっただろうか。とにかく日射しが厳しかった。 ウォーミングアップの時間に合わせてホテルを出発。選手たちはそれぞれが緊張した面持ちでバスに乗っていた。ホテルから試合球場まではバスで10分ほど。試合会場施設にバスが到着すると試合球場とは違う方向へ。ロッカールームは球場から離れた場所に用意してあり、試合中は試合球場のロッカーを使えるのだが、試合前はこちらのロッカーを使うことになっていた。ロッカールームに入るとそれぞれのネームプレートが貼ってあった。ウォーミングアップの準備を整え球場へ歩いて向かう。いざ当日の試合球場に着くと自然と身が引きしまった。久しく味わっていない、いい緊張感を思い出した。また選手だった時とは違う感覚だ。こんな経験ができていることに感謝だった。

 限られた時間でウォーミングアップを終え、試合へと挑んだ。結果は1―7で敗戦。残念ながら初戦を落としてしまった。WBCという大会は、投手の球数制限が設けられており、このルールをどのように使うかで試合の明暗が分かれる。1試合においても大会期間においてもとても重要な事だと痛感する。この試合に向け、監督とコーチ陣でゲームプランをあらかじめ決めていた。もちろん制限されていた球数での交代がプランにはあった。しかし、試合はそんな簡単に、そして計算通りには進まない。その日の投手の調子にも左右されることもあれば、点差によってプランを変更することも十分に考えられるからだ。
 この試合で監督は、先発投手を43球で諦め2番手投手へと継投を試みた。しかし、2番手投手はまだ準備ができていなかった。当初の予定では、先発が49球以内で2番手へと繋ぐプランであったため、ブルペンでは先発投手がもう一人打者と対戦するという判断をしていたのだ。予定は「49球以内」だったため、”6球あればもうひとり対戦する”という判断と、”ここで交代させないと49球を超えてしまう”という監督の判断とのズレによって起こってしまったミスだ。ニュージーランド代表チームの全ての采配決定権は監督だ。監督が野手のオーダーから投手まで全てを統括することになっていた。

 ブルペンは慌ててしまった。2番手投手にはベンチワークのいたらなさで申し訳ないことをしてしまった。私が、万全を期すために、監督が審判に交代を告げる前に、一度タイムでマウンドに行かせてもらえばよかったのだ。そこでブルペンの確認もできたはずだ。「6球の感覚」の差。悔やみきれない。こんなことが3イニング目の2アウトに起こっていた。2番手で登板した投手が2連打で3失点してしまい試合はその失点の0-3のまま後半へと進んだ。

 南アフリカ代表チームは、先発投手に85球を投げさせるベンチワークを見せた。大会ルールでは50球以上投げると中4日を空けなければならない。(30球以上49以内は中1日で登板可能。29球以内なら連投可能。ただし、2連投後は中1日必要)
 大会は4日間のスケジュールのため、この投手はこの試合に全てをかけて投げていたのだ。それにしても、球数制限ルールがあるのにもかかわらず相手の先発投手に長いイニングを投げさせてしまったことは反省しなければならない。
 0-3で迎えた9回表の投手交代もベンチもミスだろう。国際大会では最後の最後まで何が起こるか分からないのだ。リードしているチームにしてみても3点差はセーフティーリードではないだろう。特に3点差というプレッシャーのかかる場面で登板するクローザーの心境はとんでもないはずだ。そのプレッシャーをかけなければならない大事な9回表を任せる投手にニュージーランドベンチは、敗戦した時の明日の試合を想定したプランで投手交代を選んでしまった。結果、この9回表に4失点してしまった。3回の継投よりも大きなミスを反省しなければならない。国際大会はほとんどと言っていいほど一発勝負だ。長くリーグ戦で戦う訳ではない。このシドニー予選は特にそうだ。多くても4試合しかないのだから。

 選手たちは本当に全力で戦っていた。試合ではミスは出るが野球は失敗のスポーツだ。そんなことはチームでカバーすればいい。グラウンドでプレーしていた選手には本当に感謝している。0-7で劣勢な9回裏の攻撃でも、逆転しようとエキサイトし1点を取り返してくれた。最後まで諦めない戦いだった。反省しなければならないのはベンチワークをうまくできなかった我々だろう。もっとミーティングを重ね、選手を見極め、辛抱強く戦わなければならなかったのだ。

 試合後、ホテルへ向かうバスの中で到着後にすぐにスタッフミーティングをすることが決まった。もちろん選手も試合観戦で相手チームの観察だ。明日はもう負けられない。浮き足立った初戦で敗戦し、危機感を味わったことでチーム全体がまとまろうとしてきた。

清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
著者プロフィール
清水直行(しみず なおゆき)
1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

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