野球日本代表 侍ジャパンオフィシャルサイト

メニュー

世界の野球

"世界の野球"【第18回】清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記 「WBC予選大会 現地レポート Vol.2」

2016年3月9日

文・写真=元 野球日本代表 清水直行

 試合開催地のシドニーで行われた2試合の練習試合の結果と選手の状態を踏まえ、いよいよ予選を迎えることになった。 振り返ってみて、改めて実感したのは練習時間などのスケジュールが決まることがいつも遅かったことだ。WBC予選前のスケジュール調整は大会本部に委ねられているのでスムーズではあったが、「予定」の話をすると、オークランドでの練習時間の決定が前日の深夜1時に決まったこともあった。今となっても、なぜ明日の練習時間が前日の夜になっても決まらなかったのかは謎だ。日本では考えられない。

 練習はというと、前回のレポートでも書いたようにほとんど全体練習を行えていなかったため、実戦形式を取り入れて行った。いわゆるシート打撃やシチュエーションノックなどだ。しかし、大会前になると練習場所と時間は大会本部に管理されているため、時間をうまく利用しないといけない。特に、メイン球場の利用時間は制限が厳しかった。当然のことだが、限られた時間の中でどれだけの練習ができるのかを考えなければならない。投手はメイン球場のマウンドに慣れることも必要になる。しかし、私の見たかぎりではあるが、そんな準備を大切におこなっていた投手は数名であった。

 私の経験上ではあるが、はじめて訪れる球場は事前にチェックすることが山ほどある。それはデーゲームなら太陽の位置を確認することから始まる。そして、多くはマウンドのチェックに費やされる。マウンドのチェックと言っても足を踏み出す角度やマウンドからホームベースを見た景色や感覚だけではない。試合では様々なことが起こることを想定すれば、バントの転がり方や芝の長さなどもチェックする。さらには、投手の頭の上をワンバウンドで超えるような打球を想定すれば、マウンドの後ろの傾斜などの確認しておく必要があるだろう。3塁やホームベース裏へのカバーリングも重要だ。これらはゲーム中に起こり得ることの準備となるが、それだけでは準備とは言えない。
 ロッカールーム内の確認でありトレーナールームやトイレの場所まで。ブルペンへの導線やブルペン内の状況を確認しておくこともそうだ。こういったことを行うことも会場での練習でなければ確認できない。練習とは試合までにおこなう「準備」であり、走ることやキャッチボールをすること、汗をかいて動きをよくしておく練習も、すべては試合で最高のパフォーマンスをするまでの「準備」なのだ。
 私の思っている練習や準備という考え方はあくまでも個人のスタンダードであり、すべてに通用するかはわからないが、選手たちにはできるだけいろいろな状況が起きても焦らず試合に集中できる環境を自分でも作る努力をしてほしいと望んでいる。野球のプレーから程遠い作業ではあるが、のちに大きなリーグで活躍した時に個人スキルとして活用してほしい。

 練習中に何度となく投手陣には声をかけた。「今日はどんな練習をするつもりで球場に来たのか」「今やっている練習で困っていることはないか」。しかし、選手たちからは一様に調整をしたいという意見が返ってくる。またここで疑問が生じる。私は、どんな調整法を持っているのかと逆に質問をしてみた結果、ハッキリとしたプランをもっている選手は一人もいなかった。「調整」というのは、これまでやることをこなしてきた長期的なスケジュールの最後段階でのことだと考えている。それを試合前ということだけで、本来行わなければならない練習を「調整」ということにしてしまっているのではないか。そう思った私は若い選手たちには、何でもかんでも調整にしてしまうのではなく、今日やるべき練習の課題とこれからの課題を出すことにした。すると、若い選手だけではなく、投手陣の数名は各々の判断で練習に取り組んでくれた。もちろん誰ひとりとして何も練習や準備をしていないわけではない。ただ彼らは、昨日と一昨日の練習試合の投球内容の反省もしかり、今の練習中の取り組み方もしかり、何にどう取り組んでいいのか分からなかったのだ。

 野手がバッティング練習をしている際に球拾いだけをして時間が過ぎていく。こんな素晴らしい球場で練習ができること、きれいに整備されたマウンドを自由に使えること。ニュージーランド代表はWBCという大会に浮かれてはいけないのだ。なぜなら、ニュージーランド野球は常に世界の野球に対してチャレンジャーの立場なのだから。ここに選ばれた自分たちこそが、ニュージーランドの未来を担っている自覚をもっと持って欲しい。ナショナルフラッグを背負い、国の代表として戦う姿を、スタジアムで応援してくれるファンやニュージーランドのテレビ中継で観戦する子供たちに堂々と示してほしいのだ。 だからこそ、ナショナルトップチームという4年に一度しか集まれない選手たちと、こんな貴重な一週間の大切な1日の練習日を無駄にしてほしくない。そこに気付いてくれる選手が増えればニュージーランド野球の世界挑戦は加速すると信じている。
 WBC予選大会の前日と前々日の練習日に、またニュージーランド野球の課題が見つかった。このことを選手たちも理解してくれたのならば、ニュージーランド野球にとっては一つの前進なのだととらえるしかない。(続く)

清水直行 ニュージーランド野球の世界挑戦記
著者プロフィール
清水直行(しみず なおゆき)
1975年11月24日生まれ 京都府出身。日大、東芝府中を経て、99年にドラフト2位でロッテに入団。2002年から5年連続で規定投球回、2桁勝利を継続し、エースとして活躍。05年は31年ぶりの日本一にも貢献した。04年のアテネ五輪、06年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。10年から横浜(現:横浜DeNA)。プロ12年間で通算105勝、防御率4.16。現役引退後は、ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー補佐、同国の代表統括コーチを務める。

世界の野球
映画「あの日、侍がいたグラウンド」

PARTNERS

DIAMOND PARTNERS

  • 日本通運
  • ガンホー
  • asics

OFFICIAL PARTNERS

  • NISSAN
  • アサヒビール
  • SAVAS
  • OFFICIAL SUIT PARTNER

    BrooksBrothers
  • OFFICIAL TICKETING PARTNER

    LAWSONticket
  • OFFICIAL AIRLINE PARTNER

    ANA