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"世界の野球"日本人指導者の挑戦 香港野球代表「もう負けられない香港野球」

2017年11月14日

文・写真=色川冬馬

 2017年5月17日、予選を1勝3敗で終え、自力での決勝トーナメント進出を逃した香港代表団。しかし、第2ラウンドにて全勝し、予選3位のチームが敗退すれば、決勝トーナメント進出の可能性は残されていた。ゼロでない可能性にかけて迎えた第2ラウンド。

 初戦の相手は、今予選の開催都市であり、実力を持ち合わせながらも不本意な結果で予選を終えた印象の江蘇だった。圧倒的な力の差は感じないものの、荒削りで能力の高い選手が多いチームだった。また、過去には日本人の指導者もいた様で、球団職員には日本語を話せる方がいた。現在は韓国人指導者が指揮しており、スタンドから見ていた私にはコミュニケーションが十分にとれている様には見えなかった。相手の歯車を狂わせることが出来れば、もしかしたら流れを引き寄せることが出来るかもしれないと考えていた。

 この日の試合、先攻は香港代表の攻撃、攻撃的2番打者ケンの先制ホームランで幕を開けた。江蘇にとっても、香港にとっても負ければ終わりの大事な試合。香港代表が先制したことで、会場の空気も一変した。期待していた流れに持っていけるかもしれないと私は感じたが、現実はそう甘くなかった。1回の裏、いきなりケネスが崩れ10失点。試合は、そのまま相手に加点を重ねられ5回で2-19、コールドゲームにて幕を閉じた。ケネスは、自らランナーを出塁させ、置きにいった甘い球を痛打されるという自分の悪い流れを最後まで断ち切ることが出来なかった。実は今大会前からケネスは上海の監督からも声をかけられており、彼のキャリアにおいても大きな意味を含んだ試合だった。持っている能力を本番で発揮することが出来ない。どこか、こういった試合展開が彼にはトラウマになっているようにも感じた。そして、ケネスの上海いきの話しは言うまでもなく流れた。

 これまでも多くの外国人指導者を受け入れてきた香港では、人の話しを素直に聞き実践することは慣れているが、自ら挑戦したり、創意工夫したりという発想がなく他人に頼りがちなところがある。一方で海外での野球経験があるケネスの様な選手は、野球の経験値が豊富で、チーム内でも自分の意見を持って行動が出来るタイプである。その精神的支柱でもあるケネスが崩れることは、このチームにとって普通の負け試合よりも精神的ダメージが大きかった。

 話しは逸れるが、パキスタン野球がここ10年で急成長を遂げたのにも理由があると私は思っている。国内の野球環境(道具、グランド、そして指導者など)が充実してないパキスタンでは、国際大会へ出場したい際、パキスタンの選手たちが手に入れて帰ってくるものが他国に比べて圧倒的に多いのだ。野球先進国の日本、韓国、台湾から野球道具を頂くことに始まり、練習方法や戦略など、負け試合の中でも相手の観察を怠らない。疑問に思ったことは可能な限りその場で聞き、解決しようとする姿勢はパキスタン野球の今の強さを象徴していると私は思う。

 この試合に負けたことで決勝トーナメント進出の可能性は潰えた。消化不良な感覚に苛まれているのは私も選手も一緒だったが、結果が全ての競技スポーツでは現実を受け入れるしかなかった。それでも、翌日には順位を決定する最終戦を残しており、どう向き合い戦い抜くのかという、私と香港野球の集大成が待ち受けていた。

著者プロフィール
色川冬馬(いろかわ とうま)
2015年2月にイスラマバード(パキスタン)で行われた西アジア野球選手権にイラン野球代表監督として、チームを2位へと導く。同大会後、パキスタン代表監督に就任。2015年9月に台湾で行われた「第27回 BFA アジア選手権」では、監督としてパキスタン代表を率いた。

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