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"世界の野球"日本人指導者の挑戦 香港野球代表「私がみた中国野球」

2017年9月13日

文・写真=色川冬馬

 2017年5月7日、香港代表団は中華人民共和国全国運動会(通称全運会)という4年に1度行われる中国最大のスポーツの祭典に出場した。全運会とは、中国国民にとってはオリンピックよりも重要な大会と言われており、本大会で優勝すると中国の平均年収の約1年分のボーナスが与えられるそうだ。そのため、各省ごとに4年に1度の本大会に向けて強化を行っている。また、中国野球リーグとは、この全運会まで各省の野球を継続させ、強化をはかるため発足し、運営されているそうだ。こういった意味で言えば、興行として成り立つプロスポーツとは感覚が違う。

 今回の全運会予選には香港を含む10チームが参加しており、各省でチームとして運営していくには十分な人数とチーム内で切磋琢磨できるレベルに達していた。これは、イランやパキスタンなどの発展途上国で運営されている「国レベルの野球」が、中国では各省にて行われている印象だった。野球の発展途上にある国では、トップ選手の数が限られているためチーム内での競争がない。また、先発メンバーの一人でも何らかの理由で離脱してしまえば、戦力が大幅にダウンし、戦えないレベルに陥ってしまう。さらに、日常の練習ではコーチ兼任選手になることが多く、自分の練習へ時間を削ぐことが難しくなる。
 こうした負の連鎖と常に隣り合わせにある国々に対し、政府の支援・主導のもと運営され、年間を通して十分な数の選手達が野球に打ち込んでいる中国。改めて、中国大陸の大きさを痛感し、現在アジア4強(日本、韓国、台湾、中国)に居続けられる理由を、身を持って実感した。

 開幕前の練習では、何人かの中国人スタッフに日本語で話をかけられた。日本人の指導者がいた時代に通訳をしていた方や日本で学生時代を過ごし、今は審判をされている方との出会いもあった。中国国内の野球は、練習を見る限りアメリカナイズされている印象は受けなかった。アメリカ・メジャーリーグのデベロップメントセンターがあると聞いていたので、アメリカ人との出会いもあると想像していたが、中国国内リーグの指導者やスタッフにアメリカ人は含まれていなかった。私としては、前回のWBCでもアメリカ人監督が中国系アメリカ人を率いて参加していたので、もっとアメリカナイズされた野球をするのかと思い込んでいた。

 中国国内の各省のチームでは、韓国と台湾の外国人指導者が中心となり指導しており、試合前の練習もアジアの野球らしくシートノックが中心に行われていた。試合前の打撃練習では、自軍ベンチ前のベースから自軍サイドの外野へロングティーをするという練習をしており、初めてみる練習だった。各国のリーグにある、試合へ向かう準備や仕来りの違いは私が毎度楽しみにしている発見でもある。

 香港代表は、開幕前の全体練習も順当に終え、開幕戦に向けてミーティングを行いチームとしては最高の雰囲気で仕上がっていた。

著者プロフィール
色川冬馬(いろかわ とうま)
2015年2月にイスラマバード(パキスタン)で行われた西アジア野球選手権にイラン野球代表監督として、チームを2位へと導く。同大会後、パキスタン代表監督に就任。2015年9月に台湾で行われた「第27回 BFA アジア選手権」では、監督としてパキスタン代表を率いた。

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