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侍ジャパンインタビュー

侍ジャパン強化試合 対戦国紹介~上園啓史が見たオランダ野球~

2016年11月9日

 阪神、楽天で投手として活躍した2007年度のセ・リーグ新人王、上園啓史。2015年シーズン終了後、4年間在籍した楽天を退団した上園氏は今季、オランダで約3ヶ月プレー。現役生活を異国で締めくくった。来季からは独立リーグ・ルートインBCリーグに参入する滋賀県初のプロ球団「滋賀ユナイテッドベースボールクラブ」の初代監督に就任する。そんな32歳の若き指揮官にオランダ野球を語ってもらった。

渡蘭の主目的は語学と野球の勉強

――今年、オランダで現役生活を続けると知った時は驚きました。なぜオランダだったのですか?
「あまり他の人が知らない国の野球を勉強したいという思いと、元々、興味があった英語の勉強をしたいという思いが自分の中にありました。オランダは国民の大半が英語を話せると聞いていたので、それならばオランダでもう少しだけ野球をやってみようと思ったのが渡蘭の理由です」

――異国の地で上を目指して這い上がろうという思いはあったのですか?
「それはなかったです。現役への未練を断ち切ろうという理由でもなく、主目的はあくまでも語学と野球の勉強でした」

――8チームで構成されたオランダのトップリーグ「フーフトクラッセ」でプレーされていたのですよね。
「そうです。僕が所属していたのはオースターハウト・ツインズというチーム。今年二部から昇格したばかりでけっして強くはなく、リーグでは下位の成績でした」

――フーフトクラッセ全体のレベルは高いのですか?
「チーム間の戦力差が大きいので判断しづらいですが、上位2チームに限れば日本プロ野球の二軍を負かすくらいの力はあると思います」

――オランダ領の中南米出身の選手もフーフトクラッセでプレーしているのですか?
「中南米からきている選手もいます。うちのチームにも何人もいました。全体で見れば、アメリカでもプレーしたようなレベルの高い中南米出身の選手は、上位チームに所属している割合が多かったですね」

侍ジャパン強化試合のオランダ代表はトップクラスのメンバー

――11月12日、13日の侍ジャパン強化試合の来日メンバーをみるとフーフトクラッセから選出された選手の割合が多いですね。
「2年前に楽天に在籍したルーク・ファンミルや日本の球団が関心を示していると報道されたトム・デブロックも選出されていますし、フーフトクラッセのトップクラスが集まったメンバー構成です。今回の侍ジャパンとの強化試合でもいい勝負をするのではないかと思っています」

野球を続けたい選手が続けやすい環境

――フーフトクラッセでプレーしている選手は野球のみで生計を立てているのですか?
「トップクラスの選手たちはチームからの給料に加え、オリンピック協会からも給料が支給されるので、野球だけで生計を立てることが可能です。でもそんな選手はフーフトクラッセ全体で見て、1割もいません。基本的にはお小遣い程度の報酬と交通費程度しか支給されないので、本業の仕事をもっている選手が大半です」

――シーズン中の1週間の基本スケジュールはどのような感じですか?
「試合があるのが木、土、日曜日で火曜日が唯一の全体練習日。オリンピック協会からも給料をもらっている選手に関しては月、水に代表チームの練習に出る必要があります」

――全体練習日は火曜日の週1日。
「といっても夜の8時くらいから1時間半程度やるだけですけどね。メニューもウォーミングアップ、バッティング、ノック程度です」

――野球で生計が立てられない選手がオランダリーグでプレーをするモチベーションはどこにあるのでしょうか。
「野球が純粋に好きなのだと思います。野球が楽しいから、好きだからという理由でプレーしている選手がものすごく多いように感じました。長く続けている選手も多いですし、2部以下の組織も充実しているので、日本よりも野球が続けやすい環境だと思います」

――日本球界では高校生が大学、社会人で野球を続けるのも簡単なことではありませんものね。
「どこかでぐっと伸びる可能性を秘めた選手は世にたくさんいるはずです。ぼく自身、大学で伸びた遅咲きでしたしね。でも日本の場合、野球を続けたくても続けられなくて、花が咲く前にやめることになってしまうケースが多いはず。その点、オランダは野球を楽しみながら長くプレーを続けたい選手にとっては恵まれた環境。オランダ野球のいいところだと思います」

歴史と競技認知度は申し分なし

――フーフトクラッセの各チームの運営はスポンサーの出資でまかなわれているのですか?
「そうです。ぼくがいたツインズは照明を扱っている会社が給料、道具代、交通費といった経費面も含め、全面的にチームをバックアップしてくれていました。入場料を徴収するシステムを採用しているフーフトクラッセのチームはほとんどないみたいですし、徴収したとしても自分がプレーしたチームの観客数は毎試合100人程度。どうしてもスポンサー頼みになってしまいますね」

――野球に対するオランダメディアの扱いはどのような感じなのですか?
「メディアが扱うのはやはりサッカーが中心。オランダリーグの野球中継はありませんし、新聞の扱いもほとんどない。初の4強入りを果たした前回のWBCもテレビ中継はなかったみたいです」

――1922年には既に国内リーグが誕生しており、オランダ野球の歴史は長い。
「野球という競技自体は広く国内で普及しています。女子のソフトボールも盛んですし、グラウンドの数も豊富です。少年野球チームの数も多いですし、下部組織も充実している。裾野がしっかりとしているという点においては日本よりもむしろしっかりとしていると思います」

――やるスポーツとしてはしっかり根付いている。
「そうですね。リクリエーションの競技としてはしっかりと根付いているものの、観戦文化が発達していない。フーフトクラッセのトップ選手が街を歩いていても、誰も気づきませんからね」

――歴史もあって、競技自体は広く認知されている。なんだか惜しいですね。
「ほんとに惜しいと思います。見る文化が発達すればプロスポーツとして発展を遂げられる土壌は十分ありそうなので。でも近年、世界大会でいい結果が出ていることで、『自分も代表に入りたい!』といった目標を持つ選手は少しずつではあっても、増えている。まだ水面下レベルかもしれませんが、いい流れは着実に来ていると思います」

異国の地の野球が気づかせてくれたこと

――オランダ生活をあらためて振りかえってみて、いかがですか?
「自分の場合、日本のプロの世界に足を踏み入れ、野球が仕事になった時に「野球が楽しい」という感情は消えてしまったのですが、オランダでは「野球が楽しい」という感覚を思い出すことができました。心から楽しそうにプレーしているたくさんの選手たちと一緒にプレーすることで小学生の頃に戻ったかのような気持ちでプレーすることができた3ヶ月でした。6勝を挙げたことで、チームに頼られる感覚も最後に思い出せましたしね」

――現役最後のプレーの地として選択したのがオランダでよかったと。
「実は日本での晩年、本来得意だったカーブがうまく投げられなくなっていました。原因は精神的な部分だったと思うのですが、カーブだけがイップスみたいな状態になってしまって。カーブのサインを出されてもずっと首を横に振っていたんです。でもオランダではいい時のカーブがちゃんと投げられた。きっと野球を楽しめたことで、イップスを引き起こしていた要素が消えたのだと思います。その時に思いましたね。楽しいと思うことで野球がうまくなれる世界ってあるのだなと。きっと楽しいと思わないと本当の成長って呼び込めないのだろうなと。おかげでオランダのピッチングを日本でも再現出来たらいい結果が残せたかも、と思ってしまうくらいの会心の投球で現役生活を締めくくることができました」

――最後に今後についてお聞かせください。
「オランダ野球を体験できたことで、あらためて日本でプレーする選手は恵まれた環境でプレーできているということがわかりました。滋賀ユナイテッドベースボールクラブでは、きっと社会人や大学で野球を思うように続けられない選手が多いと思いますが、その分だけ野球が好きという気持ちと野球への執着心をもっている選手ばかりのはず。野球ができる喜びを感じられる選手ならば、きっと大きな成長を遂げる可能性も存分に秘めている。そんな選手たちを一人でも多くNPBに送り出せるよう、成長の後押しができればと思っています」

上園 啓史プロフィール

上園 啓史
1984年6月30日生まれ。武蔵大を経て、2006年大学生・社会人ドラフト3巡目で阪神に入団。2007年にはセ・リーグ新人王を獲得。2012年より2015年まで東北楽天で活躍。来季からは独立リーグ・ルートインBCリーグに参入する滋賀県初のプロ球団「滋賀ユナイテッドベースボールクラブ」の初代監督に就任。

 

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