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"世界の野球"パラオ共和国 よみがえれ南洋の「ヤキュウ」魂「少しの気付き」

2017年4月6日

文・写真=大庭良介(JICA青年海外協力隊)

 世界最高峰の舞台WBCが終わりを告げましたが、ここパラオにも野球リーグが存在し、3月からシーズンが始まりました。

 パラオには現在、PML(パラオメジャーリーグ)とPNBL(パラオナショナルベースボールリーグ)という二つのリーグがあります。私は配属先であるオリンピック協会、野球連盟が組織するPNBLに主に参加しています。PNBLはまだ開幕していませんが、昨シーズンについては、各州や村ごとに編成された10チームが、約3~4ヶ月間の総当たり戦を行いました。町内会対抗草野球大会をイメージして頂くとちょうど良いのではないかと思いますが、パラオには野球好きが集まる場所があります。多くの太平洋島嶼国には野球場そのものが存在しませんので、改めて、パラオが恵まれた「野球環境」にあることを実感します。

 しかし、その恵まれた環境にも拘わらず、リーグ戦を見ているともったいないと思うことが多々見受けられます。まず、パラオの野球はとにかく試合時間が長い。7イニング制にも関わらず約3時間かかることがほとんどです。試合中の攻守交代は緩慢ですし、何をするにも時間がかかります。
 この無駄により集中力が散漫になり、ゲームに集中しきれない原因になっています。また、第四回のコラムでも記したようにグランド整備や掃除をするといったような習慣はなく、試合後のグランドやベンチはそのままの状況で、グランドに敬意が払われることはほとんどありません。道具に関しても、平気でバットやヘルメット、グラブを投げて渡し合います。

 このような状況ですので、いくら練習の際にグランドや道具を大切に扱う意味を説明しても、現地の人達には理解し難い部分、つまり、道具やグランドを大切に扱ったところで、攻守交代で走ったところで、そこにどのような具体的効果が期待できるのか、彼等には想像も付かないし、その必要さえないのではないかと思わされます。そして、そもそも颯爽としたプレーや道具グランドを大切にする方法を経験したことも見たこともないかもしれないとも思いました。

 そこで私は、昨シーズンのことになりますが、パラオの在留邦人の皆さんに協力していただき、このPNBLにパラオの日本代表チーム、その名もJAPAL(ジャパル:JAPANとPALAUの複合語)を結成して参戦することにしました。

 そこには、主に3つの狙いをこめました。
・現地の人々に、颯爽とプレーする姿を見せる。
・道具やグラウンドを大切に扱う姿勢を実演して見せる。
・純日本チームを作ることで、現地チームに対抗意識を植え付ける。

 JAPALのメンバーには野球経験者はほとんどおらず、私を含め硬式野球経験者は5名のみ。中には野球を一度もしたことのない方もいました。そのような皆さんに、硬式球と木製バットの試合に参加して頂き、且つ全力プレーや試合後のグラウンド整備に加えてスタンドのゴミ拾いをお願いしましたが、皆さんお忙しい中、私の主旨に賛同くださり、愚痴一つこぼすことなくご協力頂きました。この場をお借りしまして、JAPALメンバーの皆さんに感謝申し上げさせて頂きます。ありがとうございました。

 JAPALの参戦により良い循環が生まれました。初の日本人チームの参戦ともあり地元紙でも紹介されるなど注目が集まり、相手チームはJAPALを倒すぞとより一層試合に意気込みをかけ試合に向かう中で、ともすればマンネリ化しがちなリーグ戦に良い意味での緊張感が生まれ、参加選手達の取り組む姿勢に前向きな変化が見られました。特に一番良かったのは、試合後JAPALが行うグランド整備を真似し、私が「整備をしよう!」という前に動き出すチームも数は少ないですが出てくるようになったことです。背中で見せることにより、口で説明するよりもわかりやすく伝えることができたのかなと思います。

 ただ、JAPALに勝利した相手チームにはメッセージが上手に伝わらず反省点が残りました。いくら私たちが、グランド内でキビキビとプレーし、グランド整備や掃除を徹底したとしても、負けた相手に対して我々のメッセージは説得力を持ちません。「JAPALに勝ったのだから、そんなことしたって意味がないだろ。」という具合です。実利的であるパラオの人たちに、試合に直結しないことや、技術向上に直接繋がらないことを伝えるのは難しい。でも、そのような意識付けこそが、野球人として、人間力の向上に繋がるのだと最後まで伝え続けていきたい。そのように考えています。

 野球連盟のミーティングであるチームの監督から、「JAPALの一体感はいい、あの一体感をみな真似するべきだ。」との発言がありました。またある時、私が指導している10代の選手の一人が「トンボを互いのチームがすることでトンボ中に試合の話を相手とできていいね」と言ってきました。その子が感じたような“少しの気付き”を積み重ねることによって、より良いプレーヤー、さらには、より成熟した人間になっていけるのではないかなと感じます。

 JAPALが参戦したからといってすべてのチーム、選手が変わることはありません。しかし、少なからず何名かの現地の人の心には私のメッセージが響いたのではないかと感じでいます。特に若い世代の子たちに多くを感じてもらうことに意味があると思いますし、事実として彼等の反応に手応えを感じています。パラオ野球の悪い慣習を、まだそれに染まっていない若い世代を中心に改革することができれば、パラオヤキュウの再復興に向けて、かつてパラオの多くの人達が熱狂した「ヤキュウ魂」を取り戻すことができるのではないかと考えています。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

著者プロフィール
大庭 良介
1992年9月21日生
湘南工科大学附属高校-日本体育大学
2015年7月よりパラオオリンピック協会・パラオ野球連盟に青年海外協力隊 野球隊員として配属。委任統治していた時代に日本人が伝えたヤキュウの再復興、ヤキュウを通じた人間力の向上を目指し、多くの事を現地人、環境から学び経験している。

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映画「あの日、侍がいたグラウンド」

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