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"世界の野球" 南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信 第6回「第25回 世界少年野球大会 千葉大会~当日編~」

2016年9月6日

文・写真=白川将寛(JICA青年海外協力隊/フィジー野球ナショナルコーチ)

「マサ!トイレに連れてって!」
成田空港に先に到着していた私がフィジー野球の子どもたち5名を出迎えた時、アナレイ君がそう言うのでトイレに連れていきました。ほかの4人もみんなついてきました。トイレにつくと用を足さずに、アナレイ君は真っ先に洗面台に向かいました。すると、、、 石鹸を手にとり頭にこすりつけ、シャンプーし出しました。
「マサ!気持ちいいね~!!」
水で綺麗に洗い流しながら、鏡を見て大興奮!!次に彼の目に止まったものは、あの熱風で手を乾かす装置。(ま、まさか…!)
…勢いよく濡れた頭を突っ込みました。ドライヤー化しておりました。笑
 トイレに入ってくる日本人に、大声で「コンニチワ!」「アリガトオ!」と気軽に声をかけまくっており、びっくりされている方もおられました。あの時、驚かせてしまった方々、大変申し訳ございませんでした。
 初日からこんなスタートだったので益々彼らのことが好きになったし、彼らが日本でどんな9日間を過ごすのかを考えると私まで興奮してきました。

 2015年の8月2日から10日まで千葉県成田市で開催された第25回世界少年野球大会千葉大会(The 25th World Children’s Baseball Fair 2015 in CHIBA:以下、WCBF2015と表記)。フィジー野球の子どもたちは3年ぶりに世界少年野球推進財団様に招待され、世界16の国・地域の子どもたちと同じ宿舎で寝食を共にし、野球教室や様々な異文化交流イベントを通じて、交流を深めることができました。歴史館見学や成田山新勝寺への参拝などで日本文化に触れたり、QVCマリンフィールドで初めてのプロ野球観戦も楽しみました。

 野球教室では、球場に設けられた様々な練習エリアで、元メジャーリーガーのコーチなどから基本的なことから応用的なことまで熱心に教えてもらいながら楽しそうに練習していました。
 特に一番興奮していたのが、水浸しのブルーシートに向かって滑り込むスライディング練習。猛暑だったし、面白そうだし、早く水に触れたいのでしょう、始める前の彼らのウキウキ感が半端じゃない。
 とにかく1番目に滑りたいから、コーチの「じゃあ、整列!」の指示が出た瞬間、凄まじい速さで整列するフィジーの子どもたち。最前列をみんなで取り合い。そして練習が始まると、少し怖がりながら滑る日本人の子たちと比べるとフィジーの子たちは何の恐怖心もなくキャッキャキャッキャ笑いながらスライディング。日本人の子たちにバレないように順番を追い越しながらどんどん滑りに行く。いや、滑りに行くと言うより、ラグビーでいう「トライ」しに行っている感じでした。さすがラグビー大国フィジー。コーチに「オオオ?!フィジー、Very good!!」と褒められている姿を見て、なんだか嬉しくなりました。
 同時に、とにかく走ることが大好きな彼らの長所を最大限に活かすために、“走塁で相手に襲い掛かる機動力野球”をフィジー野球スタイルにしていければいいなと思いました。近年、「機動破壊」という言葉が日本野球界に浸透してきていますが、フィジー野球の将来はまさにこの「機動破壊」をスタイルとして(それはまるで世界王者であるフィジーラグビー選手が相手のデフェンスを巧みなステップで交わし、時には破壊し突破する攻撃の如く)チームを作り上げていければ面白いなと思いました。

 練習の合間にフィジーの子たちと相部屋の日本人の子たちと話す機会があり、「フィジーの子たち、どう?」と尋ねると、
「あいつら、自由すぎる。」
と言われました。
・就寝時間になっても全然寝ない。
・日本文化を紹介したくて持ってきた5つの紙風船は、容赦なく強烈にアタックされ4つ割られたので1個はもう隠してる。
と言われました。なんだかごめんなさい。笑

 大会期間中、彼らの様々な姿を見ることができました。フィジーでは珍しい蝉の抜け殻を投げつけ合って遊んでいる姿。コーチや大会スタッフ、新しい友達と嬉しそうに話したりハイタッチしている姿。普段と変わらぬ、カメラを向けた時のサービス精神旺盛な姿。「休憩!」と聞こえたら水分補給に向かう凄まじい速さ。ちょっと疲れたらすぐに座り込む練習への軽さ。(苦笑)「マサ!箸、簡単に使えるよ!」と何度もアピールしてくる姿。日が経つにつれて真剣になってきた練習への眼差し。日本人の子に平気でフィジー語で話しかけている姿。訳わからん理由で大泣きし、たくさんのスタッフさんに迷惑かけたのに、翌日何事もなかったかのように大笑いしていた姿。
 どこにいてもあるがままの彼らだったので心から感動しました。誰かに合わせるのではなく、自分のままでいること。自分の意志を大切に、そして「自由」を自分に許すこと。何か、生きる上で忘れちゃいけないことを彼らは全身全霊で表現していたような気がします。彼らには、世界中にたくさんの友達が出来ました。私が彼らにぼんやりとでもいいから気づいてほしい事。それは、“野球が人と人とを繋いだ”という事実。それだけです。
 野球をきっかけにたくさんの人や感動との出逢いがある。そこに自分自身で気づいたとき、彼らはさらに野球の魅力にはまっていくのではないかと思います。そして、「野球を思いっきりやりたい!」という彼らの想いをフィジーで毎日満たすことができるように、フィジー野球協会のイノケさんとともに練習環境の整備や協会の体制をより良いものにしていきたいと思います。

 フィジーに帰国してからは野球が好きで好きでたまらない様子。大会で頂いたグローブや帽子を大事そうに、且つ周りの子に自慢しながら(笑)、野球の練習に励んでいます。大会前と比べると野球の技術が目を見張るほど高くなっており、周りの子たちも驚いていました。ただ、それ以上に私が驚かされたのは、彼らの野球への姿勢です。人の話を真剣に聴くようになっていたり、仲間を思いやるようになったり、簡単に泣かなくなったり。以前は、へらへら楽しんでいたのが、「真剣」に楽しむようになり、何より個人プレーに走りがちだったところが、仲間との「チームプレー」を楽しむようになりました。 そんな彼らの変化・成長を見て、大会の素晴らしさに改めて感動しました。
 今年の8月17日から開催されている第26回世界少年野球大会富山大会でも、きっと、世界中の子どもたちの素敵な笑顔が会場中に溢れ、感動に満たされていることと思います。

 世界少年野球推進財団の皆様、運営スタッフの方々には大変お世話になりました。また、日頃から子どもたちの練習を見守ってくださっている保護者や地域の方々、フィジー野球協会の活動を応援してくださっているJICAの方々にも厚く御礼申し上げます。 最後に、素敵なクリスマスプレゼントをフィジーに贈ってくださった王貞治理事長へフィジー野球協会及び参加者一同より心から感謝申し上げます。Vinaka Vakalevu. (ビナカバカレブ。フィジー語で、本当にありがとうございました。)

南の楽園フィジーのHAPPYベースボール通信
著者プロフィール

大嶋賢人
1994年8月8日生
都内の教育大学を卒業後2017年8月よりFiji Baseball & Softball Associationに青年海外協力隊の野球隊員として配属。ナショナルチームの指導や巡回型普及活動を行っている。「年間300日雨が降る」と言われる首都スバ市で”NO SWING-NO HIT!”をモットーに現地の子どもと白球を追っている。好きな言葉は「出来なくて当たり前、出来たら男前」。

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